- 武庫之荘のカレー屋「牛羚羊」で1年飲み続けたKAMIKATZビールに会いに、徳島・上勝町を訪問
- 醸造所見学で知った「ビールは手段、ゼロウェイストが本丸」という思い
- Hotel WHYに泊まってゴミ45分別を体験し、自分の暮らし方を見直すきっかけになった
1年以上通い続けたカレー屋で出会ったクラフトビールに、ここまで人生を揺さぶられるとは思いませんでした。
2025年6月、ついに徳島県上勝町の醸造所を訪問。ビールを飲みに行ったつもりが、帰ってきたら暮らし方が変わっていました。
- KAMIKATZビールとの出会い
- RISE & WIN タップルーム&レストラン
- Stone Wall Hill 醸造所見学
- ゼロウェイストの町で暮らしてみた ― Hotel WHY宿泊記
- 上勝から帰って変わったこと
- Morning Summerのスペック
- まとめ
KAMIKATZビールとの出会い
きっかけは武庫之荘にあるカレー屋「牛羚羊(ウシカモシカ)」でした。
ここのカレーが好きで通っていたんですが、あるときメニューにあったKAMIKATZのMorning Summer(NE IPA)を飲んで、衝撃を受けました。トロピカルなホップの香りに、上勝町産の柚香(ゆこう)果汁が加わった柑橘感。ジューシーなのにすっきり、カレーとの相性も抜群です。
牛羚羊の店長は普段あまりお酒を飲まないそうですが、店で出すビールを探す中でKAMIKATZを選んだとのこと。そのこだわりに感謝しかありません。
1年以上飲み続けるうちに「一度現地に行ってみたい」という気持ちが募り、2025年6月に決行しました。
RISE & WIN タップルーム&レストラン
宿泊先のHotel WHYに車を停め、レストラン「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」まで歩きました。約3km、40分ほどの道のりです。
店内に入ると、まず目を引くのがビンで作られたシャンデリア。廃材を再利用したインテリアが随所に見られます。「ゼロウェイスト」をテーマにしたブルワリーだということが、空間全体から伝わってきます。
この日のタップリストは7種類。木の板にビール名が書かれたスタイルです。
牛羚羊の店長から聞いていた「Game Changer」という銘柄が気になっていたんですが、残念ながらこの日は樽が繋がっていませんでした。スタッフの方いわく「秋にはボトルを出そうと思っている」とのこと。
飲んだビール
1杯めはHobokatz IPA(West Coast IPA / ABV 6.5%)。札幌のファントムブルワリー「HOBO Brewing」とのコラボ銘柄です。アメリカンホップとニュージーランドホップを組み合わせた、柑橘系の香りとすっきりした苦味。テラス席で山の緑を眺めながら飲む贅沢。
2杯めはMorning Saunner(塩レモンラガー / ABV 5.0%)。愛媛・宇和島産の無農薬レモンと徳島の海塩を使った、サウナ好きのスタッフが作った1杯。ベアレンのレモンラードラーを彷彿とさせる爽やかさで、暑い日にぴったりでした。
フード
フィッシュカツプレートを注文。タルタルソースとカツの相性が抜群です。野菜グリルも塩とスパイスが効いて美味しかったのですが、「前菜」とのことなのにメインの後に出てきたのはご愛嬌。
帰り際にボトル販売コーナーも覗きました。お土産用に持ち帰れるラインナップが並んでいます。
Stone Wall Hill 醸造所見学
レストランからタクシーで醸造所へ向かいます。上勝町内の移動は「一般社団法人ひだまり」のタクシーが便利で、料金も非常にリーズナブルです。まあまあな坂道を上がっていくと、第2工場「KAMIKATZ STONEWALL HILL CRAFT & SCIENCE」に到着。元製材所をリノベーションした醸造所です。
見学は完全予約制で、事前予約・決済が必要です(1〜3名 5,500円/人、4名以上 4,500円/人)。この日はストアマネージャーの女性スタッフに案内していただきました。気さくな方で、質問にも丁寧に答えてくれます。
RISE & WINの成り立ち
母体は菌の検査を行う会社。上勝町から「何かできないか」と依頼があり、最初は量り売りの店を始めたそうです。
ところが、遠方からの来訪者はいたものの地元の高齢者には響かず、うまくいかなかった。そこでビール醸造に方向転換し、今年で8年目を迎えます。
案内の中で一番印象に残った言葉があります。
「ビールも大事にしているけれど、本当に一番伝えたいのはゼロウェイストへの思い。ビールをきっかけに、そこを考えてほしい」
まさにそうです。ビールは「手段」であって、ゼロウェイストが「本丸」。この構造を知ったことで、KAMIKATZを飲む意味が変わりました。
醸造設備
Stone Wall Hillの醸造タンクは1基1,500L。定番商品はこちらで仕込みます。一方、レストラン側には300Lの小型設備があり、新商品の実験やテスト醸造に使われているそうです。
醸造釜の内部。隣のスペースからミルで砕いた麦芽を落とし、ぬるま湯の入った釜で煮てマッシングします。
ホップと麦芽のサンプルを実際に触って香りを嗅げるのが、この見学の醍醐味です。
ホップはNugget(柑橘系の香り、IPAに使用)ともう1種類。もう1種類はグラッシー(草っぽい)な香りで、正直ちょっと苦手でした。麦芽はピルスナー、ペールエール、スタウトモルトの3種類。ピルスナーとペールエールはビスケットや紅茶のような味がしました。
reRise ― 麦芽カスから液体肥料へ
醸造の副産物である麦芽カスを、液体肥料に変換して地元の水田や麦畑で利用する「reRise」というプログラム。タンクに近づくとかなり酸性の匂いがしました。ゼロウェイストを掲げるブルワリーだからこそ、副産物も資源として循環させています。
柚香(ゆこう)― 上勝の幻の柑橘
KAMIKATZの看板ビール「Morning Summer」に使われている柚香。橙(だいだい)と柚子の自然交雑種で、全国生産量の約90%が上勝町産という希少な柑橘です。
「香りのゆず、酸味のすだち、味の柚香」と地元では言われています。主にポン酢の原料として使われ、絞った後の果実は廃棄されていました。それをビールに活用したのがRISE & WINの始まり。柚香がなければ、このブルワリーは存在しなかったかもしれません。
テイスティング
見学中に試飲させてもらった「Tap In」。やや濁りがあって炭酸弱め。「もう一回ドライホッピングする」と醸造スタッフが言っていた、まだ仕上げ途中の一杯です。完成前のビールを飲めるのは醸造所ならではの体験。
品質管理ラボには、アインシュタインの「想像は知識よりも大事」という言葉が掲げられていました。
ラボを見ながらふと思ったのは、母体が菌の検査会社だという成り立ちのこと。以前、あるブラウマイスターが「きちんと微生物学に向き合わないと、いい酒は造れない」と発信していたのを思い出しました。KAMIKATZが高品質なビールを安定して出しつつ、フルーツサワーやバレルエイジドのような攻めた商品にも挑戦できるのは、「ビール屋」ではなく「微生物を扱う会社」がベースにあるからなのかもしれません。
バレルルーム
「Owner's Barrel Room」には、取引先のワインバーから譲り受けた樽がずらり。ここにビールを入れて、ワインやウイスキーのエキスを活用しています。
面白いのは、上勝に譲った樽を再度ワインバーに戻して、ビールの入っていた樽でワインやウイスキーを作ることもあるという点。その逆輸入ワインが海外で評価されたこともあるそうです。
ゼロウェイストの町で暮らしてみた ― Hotel WHY宿泊記
Hotel WHYは2020年にオープンした「ゼロ・ウェイストアクションホテル」。全4室の木造メゾネットで、上勝町産の杉材がふんだんに使われています。1階にソファとバスルーム、2階に読書スペース。木の香りがやすらぎます。
宿泊料金は1泊朝食付き13,200円〜/人(2025年6月時点)。チェックインは15:00〜17:00、チェックアウトは10:30です。
夜 ― You've Been Postと柚香の本
部屋に戻って、ウェルカムビール的に置いてあった「You've Been Post(ゆうびんポスト)」を開けました。RISE & WINとポートランドのEx Novo Brewingのコラボで、オレゴン産フレッシュラズベリーを使ったフルーツサワーエール(ABV 4.0% / IBU 7)。ヒューガルデンロゼのような華やかさで、年1回の限定醸造。写真に写っているKAMIKATZのグラスはレストランで購入したもの。帰宅後もめちゃくちゃ重宝しています。
部屋に置いてあった「KAMIKATZ A to Z」という本を読みました。柚香のページには、ブルワリー創業のきっかけが詳しく書かれています。2013年のポートランド視察でオレンジビールに衝撃を受け、「柚香でできるのでは」と最初に醸造したのが「Leuven White」だったそうです。
ちなみに部屋にはYUKOH SYRUP SPICYも置いてありました。柚香果汁にクローブやバニラビーンズを加えたスパイスシロップで、炭酸で割ると絶品です。ビールだけでなく、こうした加工品にも柚香が活かされています。
翌朝 ― 45分別のリアル
上勝町は2003年に日本の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った町です。人口約1,368人、ゴミは13種類45分別。2020年にはリサイクル率80%を達成しています。
チェックアウト時にゴミ分別を体験しました。
正直に書きます。かなり面倒でした。コーヒーの豆カス、お茶の葉、梱包材、袋。少しでも残っていると分別しなければいけません。
ただ、必然的に「じゃあ、跡形もなくなくなるようなものを選んで食べよう」という発想に自然と至り、
「あれ、その方がいいよな?」
と思うようになりました。
乾電池は北海道に送って処理するため、1kgあたり119.8円のコストがかかります。まだ残量がある電池は測定して、使えるものはくるくるショップに置いている。紙を束ねる紐も、ビニールではなく紙紐を使います。ビニールだと切る手間がかかるから。
ガイドの方が教えてくれた衝撃の事実。埋立スペースはあと14年で満杯になる予測で、その後の解決策はまだないそうです。ゴミを減らし、延命するしか今は手がない。
同じタイミングで見学に来ていた4人家族のお姉ちゃんが、めちゃくちゃ細かく質問していたのが印象的でした。大学でゴミやリサイクルの研究をしているらしく、目の色が違った。
くるくるショップ
町民が不要品を持ち込み、誰でも無料で持ち帰れるリユースの仕組み。台帳に重さを記入することで、どれだけリユースできたかを可視化しています。食器、家具、衣類と品揃えは充実。ただ、下手に持って帰るとそれがまたゴミになるので、本当に使うものだけを選ぶ判断力も問われます。
キエーロ体験
キエーロは神奈川県葉山町で生まれた生ゴミ処理器。黒土に生ゴミを入れると、微生物が分解・発酵して堆肥になる仕組みです。
6日前のゲストが入れたお茶の葉やコーヒー豆のカスを見せてもらいました。お茶の葉はだいぶ萎れて色も抜けていましたが、コーヒー豆はほぼ見分けがつかないほど分解が進んでいました。
肉もOKですが、骨は分解されず残ります。大きいものはスコップで細かく切ってから入れること。100均のグッズで自作可能(底なしの箱+黒土+プチプチの蓋)で、混ぜないと腐敗して虫が湧く原因になるそうです。
いろどり橋
月ヶ谷温泉エリアにある吊り橋「いろどり橋」。2018年7月に開通した橋で、結構高い。足元が空いていてスリルがあります。途中まで大鷲が手すりに止まっていました。渓谷の水は驚くほど透明で、エメラルドグリーン。上勝の自然の豊かさを実感します。
月ヶ谷温泉で締めくくり
チェックアウト後、帰路につく前に「月ヶ谷温泉 月の宿」の日帰り入浴へ。大人650円(2025年6月時点)で、勝浦川沿いの岩風呂に浸かれます。ゼロウェイスト体験の疲れを温泉で流して、帰路につきました。
上勝から帰って変わったこと
上勝を離れて家に帰り、近所を散歩していると、目に入るものが変わっていました。
スタバの袋に飲み残しのカップ。タバコの吸殻が詰まったペットボトル。ピノの箱。上勝帰りの目には、全部が刺さります。
正直、腹が立ちました。
でも、昔からそうです。犬のフンを放置する人、公共トイレを流さない人。変わらない人は変わらない。怒っても解決しません。
テレビでAmazonドライバーの特集を見ました。荷物1つ80円、個人事業主として従わざるを得ない構造。その荷物の中身は「どうせいらないもの」も多い。届いた梱包材はゴミになる。無駄遣いはゴミを増やしているし、誰かの労働を安く消費している。
そのとおりです。全部はできません。
ゼロウェイストは素晴らしい活動ですが、それだけに全振りはできない。ここまではやる、ここからは無理をしない。その線引きを決めないと、続きません。
自分にできること:
- 間食の梱包を減らす(店で食べるか自炊する)
- 梱包・保冷剤を徹底して断る
- 袋を持ち歩く
- Amazon・メルカリを使わない(経済圏が広がるとゴミが増える)
- 衣服・家具は今あるものをリユースに出してから買う
- 量り売りのお店を見つける
「何を大事と思って生きるか」。ゼロウェイストは環境問題じゃなくて、選択の話でした。できる範囲で、ストイックにやる。それが上勝で学んだことです。
上勝から帰った翌日、牛羚羊に行ってMorning Summerを注文しました。「KAMIKATZ行ってきました!」と店長に報告。グラスの向こうに、上勝の山と、あのゴミ分別ステーションと、キエーロの黒土が見えた気がしました。
Morning Summerのスペック
記事を読んでKAMIKATZが気になった方のために、筆者が一番好きなMorning Summerのスペックを載せておきます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| スタイル | New England IPA |
| ABV | 5.0% |
| IBU | 37 |
| SRM | 3.5 |
| モルト | Pilsner Malt, Wheat Malt, Carapils, Acid Malt |
| ホップ | Motueka, Citra, Mosaic, Azacca |
| 酵母 | Imperial Yeast / Juice |
| 副原料 | Yuko Juice(柚香果汁) |
| 受賞 | インターナショナルビアカップ2019 金賞 |
あわせて読みたい
KAMIKATZビールを買うには
公式オンラインストア(KAMIKATZ ONLINE STORE|上勝(カミカツ)ビール公式通販サイト-ゼロ・ウェイストを目指す循環型のクラフトビール)のほか、Amazon・楽天市場でも購入可能です。現地のRISE & WIN Brewing Co.でもボトル販売があります。
上勝町の柚香を自宅でも
記事で紹介した柚香(ゆこう)の精油。上勝町産の希少な柑橘の香りを、自宅でも楽しめます。
ベランダでキエーロを始めるなら
記事で紹介したキエーロ(生ゴミ堆肥化)。100均の箱でも自作できますが、しっかりしたコンポストで始めたい方はこちら。
記事で紹介したレモンラードラー
Morning Saunnerが気に入った方には、ベアレン醸造所のレモンラードラーもおすすめです。
Untappd Rating Sorterのご紹介
クラフトビール選びにお役立てください。Untappdの評価順でビールをソートできるChrome拡張機能です。
まとめ
ビールに惚れて行った上勝町で、ビール以上のものを持ち帰りました。
「ビールは手段であって、ゼロウェイストが本丸」。この言葉を聞いてから、KAMIKATZを飲むたびに上勝のことを思い出します。ゴミ分別の面倒さも、キエーロの黒土の感触も、埋立スペースがあと14年という現実も。
全部はできないけれど、できることをやる。それがゼロウェイストの本質で、KAMIKATZが伝えたいことだと理解しました。
上勝町が気になった方は、ぜひ一度訪れてみてください。ビール目当てでも全然いい。きっとそれ以上のものが待っています。
施設情報
| 施設 | 住所 | 営業時間 | 定休日 | 電話 |
|---|---|---|---|---|
| RISE & WIN Brewing Co. | 徳島県勝浦郡上勝町大字正木字平間237-2 | 平日10:00-15:00 / 土日祝9:00-15:00 | 月・火・第1水曜 | 0885-45-0688 |
| STONE WALL HILL(見学) | 上勝町内(完全予約制) | 予約制 | - | - |
| Hotel WHY | 徳島県勝浦郡上勝町福原字下日浦7-2 | チェックイン15:00-17:00 | 第1火曜 | - |
| 月ヶ谷温泉 月の宿 | 徳島県勝浦郡上勝町福原字平間71-1 | 日帰り入浴10:00-20:00 | - | 0885-46-0203 |
| 牛羚羊(ウシカモシカ) | 兵庫県尼崎市南武庫之荘1-7-4 | ランチ11:30-14:30 / ディナー18:00-21:30 | 不定休 | - |
※営業時間・定休日・価格は変更の可能性があります