- 業界25年のベテランとの面談で実務1年の自分がオファーを獲得した実体験
- 「技術力が大事」と言っているのは技術を売る側のポジショントークが多い
- AI時代に本当に必要なのは技術力ではなく「目的達成力」
「もっと技術力をつけなければ」
フリーランスエンジニアなら、一度はこう思ったことがあるはずです。特にAI時代に入り、焦りを感じている人は多いでしょう。
しかし、フリーランス年目の自分の結論は少し違います。
技術力は「参加チケット」であって「勝因」ではない。
技術力は当然必要です。ただ、キャリアの分かれ目になったのは技術力の高さではありませんでした。
この記事では、フリーランスエンジニアとして年間やってきた中で辿り着いた「技術力より大事なこと」を、実体験ベースで書きます。
- 業界25年のベテランに、実務1年の自分が勝った日
- 技術が面白かった1年目→「キリがない」と気づいた2年目
- 「技術力が大事」は誰が言っているのか
- AI時代に「技術だけの人」が真っ先に消える理由
- 技術力より大事な「目的達成力」とは何か
- スキルシートにAI活用を書くべきか
- 芯のないフリーランスほどカモになる
- まとめ:技術は「参加チケット」、勝因は別にある
業界25年のベテランに、実務1年の自分が勝った日
フリーランスになって最初の案件の話です。
エージェント経由でグループ面談に参加しました。同席したのは、Railsのバージョン1の時代からプログラマーをやっている業界25年のベテラン。PHPコードをRubyに全て書き換えた経験もある、文字通りの「サイヤ人」です。
対する自分は、IT未経験から約1年で独立した「ヒヨッコ」。技術力では逆立ちしても勝てません。
結果、オファーが来たのは自分の方でした。
正直、自分でも驚きました。ただ、振り返ると理由ははっきりしています。
ベテランの方は、技術の話は確かにすごかった。でも話が長い。聞かれていないことまで延々と説明する。面談の場で「この人とチームで働きたいか」が見えなかったのだと思います。
自分がやったのはシンプルで、「今の自分が提供できる価値を明確に伝えた」だけです。技術の深さでは負けていても、「この人はプロジェクトに入ったら何をしてくれるのか」が伝わった。それが結果的にオファーに繋がりました。
当時の面談ノウハウはこちらの記事にまとめています。
技術が面白かった1年目→「キリがない」と気づいた2年目
フリーランスになった当初は、技術そのものに純粋な興味がありました。
新しいフレームワークを触るのが楽しい。知らなかった概念を理解できた瞬間の快感。自然とガツガツ勉強していた時期です。
しかし1年半〜2年目あたりで、ある壁にぶつかりました。
「これ、キリがない」
Railsを深掘りすればReactが気になる。Reactをやれば次はTypeScript。TypeScriptの次はAWSだインフラだ。技術のトレンドは次から次へと変わり、全部追いかけていたら一生勉強で終わることに気づいたのです。
そこで考え方をアップデートしました。
「個々の技術を深掘りするより、プロジェクトを前に進める人間の方が現場では重宝される」
これはフリーランス2年目の時点で気づいた、自分のキャリアを決定づけた判断です。
「技術力が大事」は誰が言っているのか
「フリーランスエンジニア 技術力」で検索すると、上位に並ぶのはほぼ全てエージェントや転職サービスの記事です。
レバテック、フリコン、ビズリンク、Relance。いずれも「技術力を高めましょう」「スキルアップしましょう」という結論に持っていき、最後にエージェント登録のCTAが出てくる構成です。
つまり「技術力が大事」の発信源は、技術力を売る側のポジショントークが大半を占めています。
その通りです。もちろん技術力が不要とは言いません。でも、実際の現場でクライアントが最も評価するポイントは、検索上位の記事が書いていることとは少し違います。
CTOの「まさに欲しかった人材」の意味
自分が今の案件に入った時、CTOから「まさに欲しかった人材」と言われました。
その案件ではバックエンド、フロントエンド、Chrome拡張を横断して担当しました。CTOは当然、技術力も重視しています。ただ、決め手になったのは「普段からChrome拡張に取り組んでいた」という点と、現場が実現したいことのニーズがぴったりハマったことでした。
キャッチアップが早く、滞留していた拡張関連の重要機能のリリースにすぐ貢献できた。
実はそれまで、Chrome拡張はCTOがほぼ一人で面倒を見ていたそうです。役員としての業務もある中でかなり大変だったようで、自分が入ることでその負担を軽減できたのは素直に嬉しかったですね。
そして任されるとスキルが上がり、さらに次の段階へ挑戦できる。この好循環が生まれるかどうかは、技術力の高さではなく「普段からの取り組みと現場のニーズが合致するかどうか」で決まります。
ここで大事なのは、Chrome拡張のスキルがない人には、この信頼は与えられなかったということです。たとえAIでコードが書けたとしても、「この人に任せられる」と初見の相手に思わせられるかどうかは別の話。
自分がChrome拡張を好んで開発してきたのは、WebアプリやiOSアプリに比べてスピード感が段違いで、既存サービスの「痒いところに手が届かない」を改善するのに最適だったからです。正直、Chrome拡張はReactやTypeScriptのような花形技術に比べると注目度は低い。みんなわかりやすい新技術に目移りして振り回されている中で、自分はあえてそこを選んだ。
当然トレードオフはあります。拡張の開発や調査をしている間、トレンド技術のキャッチアップはできない。時間は有限です。
だからこそ「どうすれば自分の魅力を最大限に出せるか」「替えが効かない存在になれるか」という視点で、磨くスキルを選ぶ。
「スキル」と聞くと技術力一辺倒で考える人がいますが、フリーランスにとってそれは視野が狭い。フリーランスは生き抜かなければならない。生き抜くために、何を選び何を捨てるかの判断こそが最も重要なスキルです。
AI時代に「技術だけの人」が真っ先に消える理由
ここまでの話はAI以前から変わらない本質でしたが、AI時代に入ってこの傾向はさらに加速しています。
「AI人材」の正体は2層構造
「AI人材」と聞くと、機械学習やディープラーニングの専門家を想像するかもしれません。しかし実態は2層に分かれています。
| 層 | 内容 | 参入障壁 |
|---|---|---|
| 第1層 | AIそのものを作る人(ML/DLエンジニア、データサイエンティスト) | 高い |
| 第2層 | AIを使いこなして成果を出す人(API組み込み、ツール活用) | 中程度 |
求人市場で「AI人材求む」と言っている企業の大半が求めているのは第2層です。
自分のポジションもここです。AIモデルを自作するのではなく、Cursor、Claude Code、Copilotを使って開発効率を上げたり、Chrome拡張にAIプロバイダの冗長化構成を組み込んだりしている。「ただのCopilotユーザー」ではなく、AIをプロダクトに組み込んで運用している点が差別化になっています。
コードを書く側→レビューする側へのシフト
2025年にAI活用を深めた結果、自分の役割が明確に変わりました。
以前: 自分がゴリゴリとコードを書く 現在: AIの出力に穴がないか、公式ドキュメントや仕様を確認してレビューする
つまり「コードを書く側」から「レビューする側」に仕事の重心が移動したのです。
はい。そこで「Copilot使ってます」だけだと弱い。「自分の役割がコードを書く側からレビューする側にシフトした」と話せると、AI活用の理解度が一段違って見えます。
この変化は「AIに仕事を奪われた人」の事例と表裏一体です。「仕様通りに実装するだけ」の仕事をしていた人が真っ先に切られています。
逆に「何を作るべきか」を判断できるポジションにいれば、AIは脅威ではなく最強の味方になります。
技術を追いかけている人がAIに書かれる側になるリスク
少し厳しいことを書きます。
個々の技術を深く追いかけ続ける人は、AIが最も得意とする領域で戦い続けていることになります。
特定のフレームワークの書き方、特定の言語の文法、特定のライブラリの使い方。これらは全てAIが学習済みの知識です。
みんなが技術を追いかけている中で同じことをやっても差別化にならない。「技術を追いかける人たちが作ったものを、目的に合わせて組み合わせて使う側」の方が希少性が高い。
技術力より大事な「目的達成力」とは何か
では、技術力の代わりに何を磨くべきか。
自分の答えは「目的達成力」です。
「目的達成力」とは、技術を手段として使い、プロジェクトや事業の目的を達成する力のこと。具体的にはこういうスキルです。
1. 「何を作るべきか」を判断する力
クライアントが「こういう機能がほしい」と言ったとき、「本当にそれが最善か」を考えられるか。要件の背景にある課題を理解し、時には「それは作らない方がいい」と言えること。
2. 優先順位をつけて前に進める力
バックログが100個あるとき、「どの順番でやれば最も事業インパクトがあるか」を判断できるか。技術力が高くても、優先順位を間違えればプロジェクトは前に進みません。
3. 技術選定を「課題解決の手段」として行う力
流行っているから使うのではなく、この課題を解決するにはどの技術が最適かで選ぶ。技術の賞味期限は3〜5年ですが、「課題に対して最適な手段を選ぶ」という判断力は腐りません。
そうです。技術力は参加チケット。一定水準の技術力を持っていることは前提で、その上で「課題解決に導けるかどうか」が本当の勝因です。
スキルシートにAI活用を書くべきか
2026年3月にスキルシートを全面リライトした際、AI活用の実績を2段落目に配置しました。
結論から言うと、AI活用は書くべきです。2026年時点では、書かないことが「キャッチアップできていない人」と見なされるリスクの方が大きい。
ただし「AIを使っています」ではなく、「AIを使って何を実現したか」を書くのがポイントです。
企業側の反応は3パターン
| タイプ | 反応 | 多い業種 |
|---|---|---|
| ポジティブ層(増加中) | AI活用できるエンジニアを積極採用 | スタートアップ、内製化企業 |
| ニュートラル層 | ツールは何でもいいから成果が出ればOK | 中規模以上の事業会社 |
| ネガティブ層(少数) | 「自分で書けないのでは?」と懸念 | SES系、金融系 |
自分はスキルシートから「AI利用不可の現場にも対応できます」を意図的に削除しました。AI禁止現場を許容するシグナルになるからです。合わない現場のフィルターとして機能させる方が、結果的にいい案件に巡り会えます。
自分の市場価値が今どの位置にあるか気になる方は、こちらの記事もどうぞ。
芯のないフリーランスほどカモになる
最近「正社員回帰」がトレンドになり、「フリーランスはリスクだ」という風潮が出ているようです。
こういう声に一喜一憂して、自分の信念も持たずふらふらしている時間はないはずです。
芯がない人ほど簡単にフックされます。そしてカモになる。
どこの誰だかわからない人が言っていることに振り回されて、自分がない状態ではどこへ行っても同じです。
会社員だった時、会社員に不満があり、フリーランスに魅力を感じたからなったはず。「やりきった」と言えるまでやったかどうか。
いいことばかり言われていますが、会社員に戻ったら戻ったで現実は厳しいですよ。急に、会社のために頑張れますか? 職場の人間関係は? 鬱陶しい人がいても、異動がない限りずっと一緒です。
こういう視点が「正社員回帰」の風潮からは抜け落ちています。
「正社員回帰ブーム」の正体が気になる方はこちらでデータ検証しています。
まとめ:技術は「参加チケット」、勝因は別にある
この記事で伝えたかったのは、「技術力が不要」ということではありません。
年間の実務経験で身につけた技術力がなければ、AIの出力をレビューすることも、要件の妥当性を判断することもできません。技術力は間違いなく必要です。
ただ、技術力だけを追いかけ続けることが最適な戦略ではないというのが、年間フリーランスをやってきた自分の結論です。
この記事のポイント:
- 業界25年のベテランに実務1年の自分が勝てたのは、技術力ではなく「価値提供の明確さ」
- 「技術力が大事」の発信源はエージェント・転職サービスが大半(ポジショントーク)
- AI時代は「コードを書く側」から「レビューする側」に仕事の重心が移動している
- 技術力は「参加チケット」。勝因は目的達成力(課題を見極め、プロジェクトを前に進める力)
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